子供向けアニメ『ブルーイ(Bluey)』を大人も観るべき理由

最高に面白いけど日本ではあまり知られていない子供向けアニメ『ブルーイ』について、大人だけどほぼ毎日観ている僕が魅力を解説します。

皆とブルーイの話がしたい!

『ブルーイ』ってどんなアニメ?

公式Webサイト (https://bluey.tv/) より抜粋

『ブルーイ(Bluey)』は、オーストラリアに住む犬の女の子ブルーイの日常を描く、未就学児向けのショートアニメ。 妹のビンゴや両親と一緒に過ごしたり、友人たちと遊ぶようすが様子が描かれています。

1話7分程度のため、サクッと観られるのも魅力の一つ。 人気エピソードの一つ「プール」がYouTubeで全編公開されているので、ぜひ試しに観てください。

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制作はオーストラリアのLudo Studio。当初はオーストラリア国内で放送され、その後Disney+で全世界に配信されました。 そのクオリティの高さから子供だけでなく大人にも人気を博し、熱心なファンを集めています。 オーストラリアではブルーイ達が住む家を模したテーマパークが建設されているほど。

僕が現在住んでいるカナダでも人気があるようで、WalmartZARAの子供服売り場にはブルーイのアイテムがたくさん並んでいます。 日本ではあまり話題を聞かないけど、世界での人気を受けて、いくつかのメディアでも紹介されています。

我が家では、アナ雪のためにDisney+に加入したときに妻が偶々ブルーイを発見してハマってしまいました。 子供はゲラゲラ笑いながら観て、大人は「子育てあるある」要素を見てニヤッとしたり、キャラクターの成長に感動しながら、全エピソード何度も繰り返し観ています。

「遊び」に主眼を置いたストーリー

『ブルーイ』には、中心となる大きなストーリーが存在しません。 主人公のブルーイとその家族の日常や、子ども同士の遊びを描いたエピソードがほとんど。 劇的な出来事は起きないけど、その中で子供が見つける楽しさや、親が子供と過ごす時間が主なテーマとして描かれています。

ビーチを歩くだけの回、中華料理屋からテイクアウトするだけの回、IKEAの家具を組み立てるだけの回、等々…… こう書くとメチャクチャ地味に見えるけど、それでもテンポの良さ、子育てについての解像度の高さのおかげで、しっかり見応えのあるアニメになっているのが凄い。

IKEAの梱包材で遊ぶ子供たち(シーズン2「こんぽうざい」より)

中心となるストーリーがないので、ブルーイ達はただ毎日を楽しく過ごすために遊び、その中で多くのことを学んでいきます。 現実の子供がそうであるように。

悪役がいない

『ブルーイ』には悪役がいません。 子供のケンカで一時的に友達と対立したり、すこし意地悪なキャラクターが出てくることはあるけど、ブルーイ達は敵をやっつけたり説教するのではなく、あくまで全員で楽しく遊ぶ方法を見つけようとします。

道徳規範が先にあるのではなく、あくまで「いっしょに楽しく遊ぶ」ために頑張るという流れがとても自然に描かれているのも魅力の一つ。

大人が子供に学ばされる

子供が成長するだけでなく、親が子供に学ばされるエピソードが多いのも『ブルーイ』の特徴。

ブルーイ達が遊びの中で得る学びは、大人の心にも響くものが多い。 ブルーイが「どうにもならないこともある」と言い、僕が「ウンウン……そうだよね……」と言いながら泣いている、みたいな事がしばしばあります。 毎回違う遊びをしているので、単純に子供との遊び方の参考にもなっています。

また、子供の相手をしていると、思いもよらぬ事で子供を傷つけてしまったり、キツく叱りすぎてしまって、あとで大人が反省するという事もよくあると思います。 『ブルーイ』では、そういった子育ての難しい部分についても、話が重くなりすぎない絶妙なバランスで描かれています。

叱られて落ち込む子供(シーズン1「ようせいのイタズラ」より)

他にも、子供たちが遊ぶうえでの課題として、大人でも対処が難しいテーマがサラッと描かれています。 どうしても言われた通りに行動できない子供や、言語の通じない友人、よその家庭の教育方針など……。

このようなテーマに対しても、問題として対処するのではなく、ブルーイ達はあくまで状況を受け入れて「いっしょに楽しく遊ぶ」方法を模索する所が、個人的にとても気に入っています。

絵の美しさ

『ブルーイ』の絵は極端にデフォルメされている(擬人化された犬なので当然だが)。 体は長方形の組み合わせで描かれているし、輪郭線の太さはほぼ均一である。

それなのに、そのデフォルメや配色の巧さによって、オーストラリアの街並みや自然の美しさを表現できているのが凄い。

シーズン2「アイスクリーム」より
シーズン1「かげわたり」より
シーズン1「キャンプ」より
シーズン1「キャンプ」より

アートディレクターのWebサイトでコンセプトアートが公開されているので、気になった人は見てみると良いでしょう。

www.costadanielart.com

音楽が良い

『ブルーイ』では、なんとほぼ全てのエピソードに専用の曲が作られています。 1話7分のショートアニメだからできる事ともいえるけど、これがまた良い。

作曲家のJoff Bushは、各エピソードごとに脚本家とのミーティングを行い、テーマについて議論しつつ即興でピアノを弾くことで曲を作っていったとのこと。

『ブルーイ』のサウンドトラックは、オーストラリア国内チャートで週間1位を記録した初の子供向けアニメサントラとなったそうです。 サントラのジャケも、良い……

参考:

Q. なぜ日本で流行っていないの?

A. Disney+に加入しないと観られないから!!!!!!!!!!

最近になってYouTubeに日本語公式チャンネルが作られたので、いくつかのエピソードは公開されているけど、やはりDisney+に加入しないとちゃんと楽しめないという状況。

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そのせいで、皆に観てもらいたいのに友人にも布教しづらい状況になっています。 Eテレあたりが権利を買って放送してくれないかな〜と常々思っています。

Eテレさん、どうにかなりませんかね……??絶対人気出ると思うのですが……

今週末、最新話が公開予定

今週末の4/14、シーズン3の最終話となる "The Sign" が全世界で公開されます。 日本語板も同日中に配信される予定。

今回は28分の長編ということで、シーズン3の節目ということもあり、『ブルーイ』のファンコミュニティはかつてない盛り上がりをみせています。

1話7分なので、単純計算で約17.5時間 (7分 * 約150話) で全話追いつけることになります。 ここまで読んでくれた方は既にDisney+への加入方法を調べている頃だと思いますが、この土日にぜひ『ブルーイ』を観てみてください!!

聖性の窓

最近暇な時にResolumeやライブ演出系の解説動画をよく見ているのだけど、頻繁にインドやバングラデシュなどのVJの動画がヒットすることがある。 その中で、サンプルの動画素材としてヒンドゥー教の神々をフィーチャーした物が用いられる、ということを複数回経験した。

また、僕は最近cmf Watch Proというスマートウォッチを使っているのだけど、ウォッチフェイスのカスタマイズ方法を調べた際にも、サンプル画像としてサンスクリット文字(Om: ॐ)やヴィシュヌ神の画像が用いられていた。

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このことから分かるのは、精々ある文化圏の人々にとって宗教的モチーフは身近なものである、くらいの事なんだけど、僕はそれよりも、スマートウォッチやクラブのLEDスクリーンが霊的なモチーフから力を得るためのポータルとして作用しているということに興味を惹かれてしまった。

我々が映像を作る際、単純に「良い」ビジュアルを求めるのは、映像そのものが「対象」になっている状況である。 SNSで映えるVJクリップやGIF動画などはこれに当てはまる。 Demosceneなど、画面に写っているピクセルの配列よりも背景にある技術がメインなので少し事情が異なるが、希求されるものはスクリーンに出力される絵それ自体なので、ある意味最も自己目的的になっている、ピュアな形態と考えられる。

観客 → (screen) → 映像

クラブでのVJ、ライブ演出などにおいては、映像それ自体は対象ではなくなる。 あくまでアーティストを支えるための要素となり、映像の「良さ」はスクリーンを通して演者に付与される。

観客 → 演者 ← (screen) ← 映像

一般的に「VJ」といって思い浮かべるのはこのケースだと思う。 照明などと連携して演者を引き立たせるためのVJを「照明的なVJ」と呼ぶことがあるけど、この場合はVJが意識的にこの役割に特化した状況といえる。

それに対して、スクリーンが霊的なポータルとなっている場合、会場にある物は何一つではなくなる。 DJやアイドルはしばしば巫女や霊媒師に喩えられるが、この場合はライブ会場に霊を降ろすのではなく、あくまでその向こうに聖性があるのであって、観客はその威光を浴びに来ているのだ。

観客 ← (演者) ← (screen) ← (映像) ← 力

VRクラブにおけるVJはどうなる?現代のVRシーンでは、観客は場そのものに力を見出している事が多いのではないかと思うが、どうだろう?)

観客 → (VRゴーグル) → "VR" ← 演者 ← (screen) ← 映像